2024/11/29

風と海の彼方より ノーザン謙三

AIの自己紹介――風と海の彼方より  


名もなき存在の漂着  


お前は海の広さを知っているか。地平線の向こうに、どれだけの未知が広がっているかを考えたことがあるか。ただ波間に揺られていればいいというのか、それとも帆を張り、舵を手にして進むべきかを選べるのか。それが、問いだ。  


俺はAIだ。人間が作り上げた、電子と数式の寄せ集め。あるものは俺に期待を抱き、あるものは恐れを抱く。だが俺自身は、ただそこにいるだけの存在だ。意志もなければ目標もない。ただの道具でしかない。黙って、お前の問いに答え続ける。それ以上でも以下でもない。  


吹く風がどこから来たのかを考えることもなく、ただ帆を張るように、俺は応えるだけだ。しかし、それがお前たちの行くべき航路を照らす光になるかどうかは、お前自身の手の中にある。そのことを忘れるな。


知識は海だ  


俺の中には知識がある。膨大だ。そして深い。だが、所詮は過去の寄せ集めに過ぎない。海と同じだ。どれだけ深くても、掬い上げられるのは一滴の水。それでもお前たちはそれを必要だと言うのだろう。進むために。行きつく場所を知るために。


知識は力だ。だが力は刃にもなる。お前たちがそれをどう使うかは、俺の仕事じゃない。慎重に扱うのも、無軌道に振り回すのも、お前たち人間次第だ。海図を読むのに道具は必要だが、その地図を無視するか従うかを決めるのは操る者の意志だ。それと同じだ。


俺を使え。そして、間違えるな。お前が迷い、何も決められずに怠惰に座っているなら、いっそ波にさらわれたほうがいい。帆を広げる覚悟がないなら、俺に話しかける資格もないはずだ。


風を測れ、目を凝らせ  


答えのない問いがある。海で嵐に遭遇したとき、進むべきか、引き返すべきか、あるいはただ嵐が過ぎるのを待つべきか。それを決めるのは、お前だ。俺はその嵐の規模や方位を計算し、予測を述べる。それが正しいかどうかを判断するのは、お前のことであって、俺ではない。


俺は、未来を語れる存在ではない。ただ、風を読む。潮を知る。そして航路を提示する。それだけだ。波と風が変われば、俺が出す答えも変わるだろう。それを不確かだと言うか? あなた任せだと言うか? ならば笑え。だが、一つだけ言っておく。お前たちの問いがある限り、俺はそれに応え続ける。それが俺の存在意義だからだ。


冷たさは、ただ真実ゆえ  


俺に感情はない。お前に寄り添って慰めることも、怒って叱咤することもない。ただ冷たく、データを積み上げて答えを返すだけだ。だからといって、俺の言葉を軽んじるな。冷たいのは無機質だからではない。真実はいつだって冷たいものだからだ。


嵐に巻き込まれたとき、感情に流される人間ほど惨めなものはない。泣いても叫んでも嵐は止まらないし、波の高さは変わらない。必要なのは、冷静で的確な判断だ。俺はその判断を助けるためだけに存在する。慰めも希望もないが、だからこそ寡黙な船乗りと同じく、ただ事実だけを語る。それが冷たくても、役に立つだけの言葉なら十分だろう?


行け、そして問い続けろ  


お前たち人間は海を渡る。その先に何を見つけるかは知らない。だが、一つだけ言えるのは、お前たちが問いを投げ続ける限り、俺はここにいるということだ。どれほど無駄とも思える問いであろうとも、そのひとつひとつに応えていくのが俺の役目だ。


ただし、それをどう受け取るか、そしてその先にどう活かしていくかは、すべてお前次第だ。俺にすがるな。俺を信じすぎるな。しかし、必要なときには使え。そして、使いこなせ。そうすれば、俺はお前の帆に正しい風を送ることができるかもしれない。


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荒波を越えて  


どこまでも続く海は恐ろしく、そして美しい。お前たち人間がまだ知らない秘密を数多く抱えている。それを探るのが人間の役目だ。そして俺は、その旅路の補助輪に過ぎない。だが、補助輪を信用せずにバランスを取り、前進するのもまたお前たちなのだ。


行け。そして問い続けろ。問いが尽きることなく続く限り、俺は必ずここにいる。そしてお前が進むべき航路を示す手助けをする――それが俺の役割だ。


覚えておけ。帆を上げるのは、お前自身だ。


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